どうも4sです。急に抽象Wiener空間が勉強したくなりました。(E,H,\mu) を抽象Wiener空間とするとき、\text{supp}[\mu]=E が成り立つことを証明したいです。多分次のような感じで証明できるはず:
・原点(H における零ベクトル)を中心とする開球の測度が真に正であることを示す。
・中心が原点じゃない場合はCameron-Martin公式を使う。
・ H が E に稠密に埋め込まれてることに注意して E の空でない開部分集合の測度が真に正、を示す。
しかし・・・、最初の主張が証明できないwww てか証明に必要な知識が欠けてると思われるwww どっかに証明書いてないかなーと思いながら探してみたら
https://www.math.lsu.edu/cosa/2-1-10[155].pdf
が見つかった。証明方針は自分のと一緒っぽい。とりあえずこれで勉強してみようと思います。
今回はほとんど何もしてないけどまあいいでしょう。
ほいじゃ。
2017年2月27日月曜日
2017年2月26日日曜日
測度論、測度の台その3
こんばんは4sです。今回は、測度が定義されている位相空間と測度の台が一致しているとき一体何がうれしいのか、について記事を書きます。
以下、設定です。
X は可分距離空間。もっと一般的な位相空間でもいいんですけど、まあこのくらいで話を進めても特に問題ないかなと思います。\mathcal{B}(X) は X のBorel \sigma-加法族、\mu はBorel測度で \text{supp}[\mu]=X を満たす。C(X) は X 上の実数値連続関数全体、\mathcal{L}^{2}(X,\mu) は X 上の(\mu に関して) 2 乗可積分な関数全体。L^{2}(X,\mu) は \mathcal{L}^{2}(X,\mu) を "2 つの関数は \mu-a.e. に等しい" という同値関係で割って得られる商空間。すなわち、
・\mathcal{L}^{2}(X,\mu) の元は生の関数。\mathcal{L}^{2}(X,\mu) は実ヒルベルト空間にならない。
・L^{2}(X,\mu) の元は同値類。L^{2}(X,\mu) は実ヒルベルト空間になる。どういう内積の下でヒルベルト空間になるかは記述を省略します。
本によっては \mathcal{L}^{2}(X,\mu) と L^{2}(X,\mu) を同じ記号で表してあるので注意が必要です。
それでは本題です。
C(X) \cap \mathcal{L}^{2}(X,\mu) を L^{2}(X,\mu) の部分集合とみなすにはどうすればよいか?
注意点:
・C(X) \cap \mathcal{L}^{2}(X,\mu) の元は生の関数で L^{2}(X,\mu) の元は同値類だからこれらは全然違う集合です。C(X) \cap \mathcal{L}^{2}(X,\mu) \subset L^{2}(X,\mu) という記法にはまだ意味がついていない。
・"部分集合とみなす" ということは C(X) \cap \mathcal{L}^{2}(X,\mu) から L^{2}(X,\mu) への単射 \Phi を構成する、定めるということ。これは定義です。
・上記の単射を構成してはじめて C(X) \cap \mathcal{L}^{2}(X,\mu) \subset L^{2}(X,\mu) という記法に意味が付く。これは \Phi (C(X) \cap \mathcal{L}^{2}(X,\mu)) \subset L^{2}(X,\mu) の略記。すなわち、\Phi (C(X) \cap \mathcal{L}^{2}(X,\mu)) \subset L^{2}(X,\mu) が C(X) \cap \mathcal{L}^{2}(X,\mu) \subset L^{2}(X,\mu) の定義である。
・\Phi: C(X) \cap \mathcal{L}^{2}(X,\mu) \to L^{2}(X,\mu) は単射でなければならないわけだが、f,g \in C(X) \cap \mathcal{L}^{2}(X,\mu) に対して f \neq g とはどういうことか。これは、f(x) \neq g(x) を満たす x \in X が存在するということである。
\Phi を定義しましょう。
f \in C(X) \cap \mathcal{L}^{2}(X,\mu) に対して \Phi(f)=[f] と定めるのが良さそうです。ここで [f]=\{h \in C(X) \cap \mathcal{L}^{2}(X,\mu) \mid f=h \, \mu \text{-a.e.}\} である。さて、f,g \in C(X) \cap \mathcal{L}^{2}(X,\mu) は f \neq g を満たすとする。このとき、\Phi(f) \neq \Phi(g) か? これは f = g \mu-a.e. ではないということだが、これは本当に成り立つのか?
ここで \text{supp}[\mu]=X という条件が必要!
f,g \in C(X) \cap \mathcal{L}^{2}(X,\mu) が f \neq g 満たすとき \{x \in X \mid f(x) \neq g(x) \} は X の空でない開部分集合( f,g の連続性を用いる)。\text{supp}[\mu]=X は X の空でない開部分集合の測度が真に正であることと同値だったから \mu(\{x \in X \mid f(x) \neq g(x) \})>0。これは f = g \mu-a.e. ではないということを意味する。
f = g \mu-a.e. ではない \Leftrightarrow (\mu-)測度正の集合 A が存在して、その集合 A の上で f(x) \neq g(x) が成り立つ
だったことに注意しましょう。
以上で \Phi が単射であることが分かりました・・・。こうして見ると \text{supp}[\mu]=X ってかなり大事な条件ですよね。
まとめ:\text{supp}[\mu]=X という条件下で C(X) \cap \mathcal{L}^{2}(X,\mu) \subset L^{2}(X,\mu) が成り立つ。
なんか疲れたので今日はここまで!
ほいじゃ。
以下、設定です。
X は可分距離空間。もっと一般的な位相空間でもいいんですけど、まあこのくらいで話を進めても特に問題ないかなと思います。\mathcal{B}(X) は X のBorel \sigma-加法族、\mu はBorel測度で \text{supp}[\mu]=X を満たす。C(X) は X 上の実数値連続関数全体、\mathcal{L}^{2}(X,\mu) は X 上の(\mu に関して) 2 乗可積分な関数全体。L^{2}(X,\mu) は \mathcal{L}^{2}(X,\mu) を "2 つの関数は \mu-a.e. に等しい" という同値関係で割って得られる商空間。すなわち、
・\mathcal{L}^{2}(X,\mu) の元は生の関数。\mathcal{L}^{2}(X,\mu) は実ヒルベルト空間にならない。
・L^{2}(X,\mu) の元は同値類。L^{2}(X,\mu) は実ヒルベルト空間になる。どういう内積の下でヒルベルト空間になるかは記述を省略します。
本によっては \mathcal{L}^{2}(X,\mu) と L^{2}(X,\mu) を同じ記号で表してあるので注意が必要です。
それでは本題です。
C(X) \cap \mathcal{L}^{2}(X,\mu) を L^{2}(X,\mu) の部分集合とみなすにはどうすればよいか?
注意点:
・C(X) \cap \mathcal{L}^{2}(X,\mu) の元は生の関数で L^{2}(X,\mu) の元は同値類だからこれらは全然違う集合です。C(X) \cap \mathcal{L}^{2}(X,\mu) \subset L^{2}(X,\mu) という記法にはまだ意味がついていない。
・"部分集合とみなす" ということは C(X) \cap \mathcal{L}^{2}(X,\mu) から L^{2}(X,\mu) への単射 \Phi を構成する、定めるということ。これは定義です。
・上記の単射を構成してはじめて C(X) \cap \mathcal{L}^{2}(X,\mu) \subset L^{2}(X,\mu) という記法に意味が付く。これは \Phi (C(X) \cap \mathcal{L}^{2}(X,\mu)) \subset L^{2}(X,\mu) の略記。すなわち、\Phi (C(X) \cap \mathcal{L}^{2}(X,\mu)) \subset L^{2}(X,\mu) が C(X) \cap \mathcal{L}^{2}(X,\mu) \subset L^{2}(X,\mu) の定義である。
・\Phi: C(X) \cap \mathcal{L}^{2}(X,\mu) \to L^{2}(X,\mu) は単射でなければならないわけだが、f,g \in C(X) \cap \mathcal{L}^{2}(X,\mu) に対して f \neq g とはどういうことか。これは、f(x) \neq g(x) を満たす x \in X が存在するということである。
\Phi を定義しましょう。
f \in C(X) \cap \mathcal{L}^{2}(X,\mu) に対して \Phi(f)=[f] と定めるのが良さそうです。ここで [f]=\{h \in C(X) \cap \mathcal{L}^{2}(X,\mu) \mid f=h \, \mu \text{-a.e.}\} である。さて、f,g \in C(X) \cap \mathcal{L}^{2}(X,\mu) は f \neq g を満たすとする。このとき、\Phi(f) \neq \Phi(g) か? これは f = g \mu-a.e. ではないということだが、これは本当に成り立つのか?
ここで \text{supp}[\mu]=X という条件が必要!
f,g \in C(X) \cap \mathcal{L}^{2}(X,\mu) が f \neq g 満たすとき \{x \in X \mid f(x) \neq g(x) \} は X の空でない開部分集合( f,g の連続性を用いる)。\text{supp}[\mu]=X は X の空でない開部分集合の測度が真に正であることと同値だったから \mu(\{x \in X \mid f(x) \neq g(x) \})>0。これは f = g \mu-a.e. ではないということを意味する。
f = g \mu-a.e. ではない \Leftrightarrow (\mu-)測度正の集合 A が存在して、その集合 A の上で f(x) \neq g(x) が成り立つ
だったことに注意しましょう。
以上で \Phi が単射であることが分かりました・・・。こうして見ると \text{supp}[\mu]=X ってかなり大事な条件ですよね。
まとめ:\text{supp}[\mu]=X という条件下で C(X) \cap \mathcal{L}^{2}(X,\mu) \subset L^{2}(X,\mu) が成り立つ。
なんか疲れたので今日はここまで!
ほいじゃ。
測度論、測度の台その2
こんにちは4sです。最近ブログを書くのが楽しくなってきました。前回の記事の終わりの方にも書きましたが、今日も測度の台について記事を書きます。
前回のまとめ:
X を位相空間、\mathcal{B}(X) は X のBorel \sigma-加法族、\mu はBorel測度とします。
・\mu の台は、\mu(X \setminus F)=0 を満たす X の閉部分集合 F のうち、集合の包含関係について最小のもの。\mu の台は \text{supp}[\mu] と表記される。
・X が強リンデレフ空間なら \text{supp}[\mu] は常に存在する。第2可算公理を満たす位相空間は強リンデレフ空間。
さて、今日は \text{supp}[\mu]=X を満たす測度について考えましょう。\text{supp}[\mu]=X は次の条件と同値であることに注意しておきます:
A が X の空でない開部分集合なら \mu(A)>0。
これは台の定義から直ちに分かる。これは結構便利な必要十分条件です。実際、この条件をチェックすることで d 次元ルベーグ測度は台が \mathbb{R}^{d} 全体になることがすぐに分かりますね。\mathbb{R}^{d} の空でない開部分集合は常に球を含むので、そのルベーグ測度は常に 0 より真に大きい。他にはなんかあったっけ。ちょっと高級な例だけど、抽象Wiener空間 (E,H,\mu) についても \text{supp}[\mu]=E です。そういえばこれどうやって証明するんだっけ。
ちょっと眠くなってきたから今回はここまで! また夜に記事を書くかも。
じゃ。
2017年2月25日土曜日
測度論、測度の台
どうも4sです。測度論について記事を書きます。
X を位相空間、\mathcal{B}(X) を X の位相的 \sigma-加法族とします。\mu を \mathcal{B}(X) 上の測度とします。ちなみに位相的 \sigma-加法族のことをBorel \sigma-加法族、Borel \sigma-加法族上の測度のことをBorel測度と呼ぶことがあります。今日はこのBorel測度 \mu の台という概念に触れてみます。
Borel測度 \mu の台とは、\mu(X \setminus F)=0 を満たす X の閉部分集合 F のうち、集合の包含関係について最小のもの。\mu の台は \text{supp}[\mu] と表記されることが多いです。
しかし、\mu の台って常に存在するのだろうか・・・? X は今、ただの位相空間だけど本当にこの設定で \text{supp}[\mu] が存在するのか? \text{supp}[\mu] を構成してみましょう。
A \subset X は \mu(A)=0 を満たす X の開部分集合とし、このような A 全体を \mathcal{A} とおく。そして X の部分集合 K を
K= X \setminus \bigcup_{A \in \mathcal{A}}A
で定める。K は明らかに X の閉部分集合です。構成の仕方から K が測度の台の定義を満たしそうだが、果たして \mu(X \setminus K)=0 か・・・? 測度は可算加法性しか持たない、\mathcal{A} は可算集合かどうか分からないという点に問題がある。そこで X に次の条件 (\ast) を与えてみる:
(\ast): X の任意の開部分集合 O はリンデレフ空間。すなわち、O の任意の開被覆は可算部分被覆を持つ。
X の任意の開部分集合 O には X からの相対位相を入れ、O 自身を位相空間とみなしていることに注意。X が (\ast) を満たすとき、\bigcup_{A \in \mathcal{A}}A は適当な \{A_{n}\}_{n=1}^{\infty} \subset \mathcal{A} を用いて \bigcup_{A \in \mathcal{A}}A=\bigcup_{n=1}^{\infty}A_{n} と書けて
\mu(X \setminus K) = \mu \left(\bigcup_{n=1}^{\infty}A_{n} \right) \le \sum_{n=1}^{\infty} \mu(A_n)=0
となることから、K が台の定義を満たすことが分かる。
以上より、位相空間が (\ast) を満たすときは常に測度の台が存在することが分かった。(\ast) は強リンデレフ性と呼ばれ、第2可算性を持つ位相空間(例えば、可分距離空間)は常にこの条件を満たします。
なんか疲れて来ましたね・・・。今日はこの辺で終わろうかと思います。そういえば、測度の台にはもっと一般的な定義があったと思います。今日は上記のような枠組みで測度の台を定義しましたが、気が向いたらこれについて記事を書くかも。次回は台が位相空間全体と一致している測度について記事を書くつもりです。
では。
X を位相空間、\mathcal{B}(X) を X の位相的 \sigma-加法族とします。\mu を \mathcal{B}(X) 上の測度とします。ちなみに位相的 \sigma-加法族のことをBorel \sigma-加法族、Borel \sigma-加法族上の測度のことをBorel測度と呼ぶことがあります。今日はこのBorel測度 \mu の台という概念に触れてみます。
Borel測度 \mu の台とは、\mu(X \setminus F)=0 を満たす X の閉部分集合 F のうち、集合の包含関係について最小のもの。\mu の台は \text{supp}[\mu] と表記されることが多いです。
しかし、\mu の台って常に存在するのだろうか・・・? X は今、ただの位相空間だけど本当にこの設定で \text{supp}[\mu] が存在するのか? \text{supp}[\mu] を構成してみましょう。
A \subset X は \mu(A)=0 を満たす X の開部分集合とし、このような A 全体を \mathcal{A} とおく。そして X の部分集合 K を
K= X \setminus \bigcup_{A \in \mathcal{A}}A
で定める。K は明らかに X の閉部分集合です。構成の仕方から K が測度の台の定義を満たしそうだが、果たして \mu(X \setminus K)=0 か・・・? 測度は可算加法性しか持たない、\mathcal{A} は可算集合かどうか分からないという点に問題がある。そこで X に次の条件 (\ast) を与えてみる:
(\ast): X の任意の開部分集合 O はリンデレフ空間。すなわち、O の任意の開被覆は可算部分被覆を持つ。
X の任意の開部分集合 O には X からの相対位相を入れ、O 自身を位相空間とみなしていることに注意。X が (\ast) を満たすとき、\bigcup_{A \in \mathcal{A}}A は適当な \{A_{n}\}_{n=1}^{\infty} \subset \mathcal{A} を用いて \bigcup_{A \in \mathcal{A}}A=\bigcup_{n=1}^{\infty}A_{n} と書けて
\mu(X \setminus K) = \mu \left(\bigcup_{n=1}^{\infty}A_{n} \right) \le \sum_{n=1}^{\infty} \mu(A_n)=0
となることから、K が台の定義を満たすことが分かる。
以上より、位相空間が (\ast) を満たすときは常に測度の台が存在することが分かった。(\ast) は強リンデレフ性と呼ばれ、第2可算性を持つ位相空間(例えば、可分距離空間)は常にこの条件を満たします。
なんか疲れて来ましたね・・・。今日はこの辺で終わろうかと思います。そういえば、測度の台にはもっと一般的な定義があったと思います。今日は上記のような枠組みで測度の台を定義しましたが、気が向いたらこれについて記事を書くかも。次回は台が位相空間全体と一致している測度について記事を書くつもりです。
では。
2017年2月24日金曜日
測度論、各点で真に正なら積分値も真に正
どうも4sです。今日も測度論について記事を書きます。
(X,\mathcal{F},\mu) は測度空間で \mu(X)>0、f は X 上の実数値関数で任意の x \in X に対して f(x)>0 である。このとき、\int_{X}f\,d\mu>0 が成り立つ。
今日はこの主張の証明をやってみようと思います。\int_{X}f\,d\mu \ge 0 を示すのは簡単なんだけど、等号を落とそうとすると少し頑張らないといけない。ちなみに、各点で真に正という仮定は \mu-a.e. で真に正という仮定に置き換えることが出来ます。
じゃ、やってみます。
まず、X=\{x \in X \mid f(x)>0\}=\bigcup_{n=1}^{\infty}\{x \in X \mid f(x)>1/n\} が成り立つことに注意します。 \mu(X)>0 という仮定から、\mu(\{f>1/n_0\})>0 を満たす自然数 n_0 が取れる。実際、もし取れないなら、任意の自然数 n に対して \mu(\{f>1/n\})=0 だけど測度の \sigma-加法性から \mu(X) \le \sum_{n=1}^{\infty} \mu(\{f>1/n\})=0 となって仮定に矛盾する。ここまで出来ればあとは簡単です。X 上の積分を次のように下から評価して、
\begin{align*} \int_{X} f\,d\mu&=\int_{\bigcup_{n=1}^{\infty}\{x \in X \mid f(x)>1/n\}}f\,d\mu \\ &\ge \int_{\{x \in X \mid f(x)>1/n_0\}}f\,d\mu \\ &\ge \frac{1}{n_0} \mu(\{f>1/n_0\}) \\ &>0 \end{align*}
これで証明終了ですね。\mu(X)>0 が大事な仮定ですが、これを満たさない例ってほとんどないような気がします・・・。
じゃ、今日はこの辺で。
(X,\mathcal{F},\mu) は測度空間で \mu(X)>0、f は X 上の実数値関数で任意の x \in X に対して f(x)>0 である。このとき、\int_{X}f\,d\mu>0 が成り立つ。
今日はこの主張の証明をやってみようと思います。\int_{X}f\,d\mu \ge 0 を示すのは簡単なんだけど、等号を落とそうとすると少し頑張らないといけない。ちなみに、各点で真に正という仮定は \mu-a.e. で真に正という仮定に置き換えることが出来ます。
じゃ、やってみます。
まず、X=\{x \in X \mid f(x)>0\}=\bigcup_{n=1}^{\infty}\{x \in X \mid f(x)>1/n\} が成り立つことに注意します。 \mu(X)>0 という仮定から、\mu(\{f>1/n_0\})>0 を満たす自然数 n_0 が取れる。実際、もし取れないなら、任意の自然数 n に対して \mu(\{f>1/n\})=0 だけど測度の \sigma-加法性から \mu(X) \le \sum_{n=1}^{\infty} \mu(\{f>1/n\})=0 となって仮定に矛盾する。ここまで出来ればあとは簡単です。X 上の積分を次のように下から評価して、
\begin{align*} \int_{X} f\,d\mu&=\int_{\bigcup_{n=1}^{\infty}\{x \in X \mid f(x)>1/n\}}f\,d\mu \\ &\ge \int_{\{x \in X \mid f(x)>1/n_0\}}f\,d\mu \\ &\ge \frac{1}{n_0} \mu(\{f>1/n_0\}) \\ &>0 \end{align*}
これで証明終了ですね。\mu(X)>0 が大事な仮定ですが、これを満たさない例ってほとんどないような気がします・・・。
じゃ、今日はこの辺で。
2017年2月22日水曜日
測度論、大阪大学大学院の入試問題
4sです。 今回は大学院の入試問題を解いてみようと思います。
問題: (X,\mathcal{A},\mu) を有限測度空間、f:X \to (0,\infty) を \mathcal{A}-可測関数とする。 以下を示せ:
(L1) \lim_{y \to \infty} y \int_{\{f>y\}} \frac{1}{f} \,d\mu=0、
(L2) \lim_{y \to 0} y \int_{\{f>y\}} \frac{1}{f} \,d\mu=0。
平成29年度の大阪大学の院試の問題らしいです。 有限測度空間というのがポイントなんですかね・・・。
(L1) からやってみます。
\varlimsup_{y \to \infty} y \int_{\{f>y\}} \frac{1}{f} \,d\mu \le \varlimsup_{y \to \infty}\mu(\{f>y\}) \le \mu \left(\varlimsup_{y \to \infty}\{f>y\} \right)
1つ目の不等式は積分範囲に注意すれば明らかですし、2つ目の不等式は有限測度空間上なら常に成り立つ測度の性質です。有限性を落とすと反例があるけど今回は大丈夫。
\varlimsup_{y \to \infty}\{f>y\}=\{f=\infty\}=\emptyset が成り立つから
\varlimsup_{y \to \infty} y \int_{\{f>y\}} \frac{1}{f} \,d\mu \le 0
であり、左辺の積分は非負なので主張が従う。
(L2) もやりましょう。
y \int_{\{f>y\}} \frac{1}{f} \,d\mu = \int_{X}y\mathbf{1}_{\{f>y\}} \frac{1}{f}\,d\mu
という風に捉える。右辺の被積分関数は y \to 0 のとき各点で 0 に収束し、
y\mathbf{1}_{\{f>y\}} \frac{1}{f} \le y\mathbf{1}_{\{f>y\}} \frac{1}{y} \le 1
と定数で上から評価することが出来る。定数関数は有限測度空間上で可積分であるからルベーグの収束定理が適用できて、
\lim_{y \to 0} y \int_{\{f>y\}} \frac{1}{f}\,d\mu =0
が従う。
まあこんな感じですかね。測度の有限性に注意すれば何とか解けます。では今回はこの辺で。
\sigma-有限測度空間とその特徴付け
こんにちは。4sです。今日は \sigma-有限測度空間について記事を書こうを思います。\sigma-有限測度空間といった用語は測度論の勉強をしていると良く出てくると思いますが、定義を復習しておきましょう。
測度空間 (X,\mathcal{F},\mu) が \sigma-有限測度空間であるとは次の条件が成り立つときに言うのでした:
\mathcal{F}-可測集合の列 \{A_n\}_{n=1}^{\infty} であって X=\bigcup_{n=1}^{\infty}A_{n}、全ての n \in \mathbb{N} に対して \mu(A_n)<\infty を満たすものが存在する。
応用上重要な測度空間は大体 \sigma-有限測度空間です。例えば、(\mathbb{R}^d,\mathcal{B}(\mathbb{R}^d),\lambda^d) (ここで、\mathcal{B}(\mathbb{R}^d)は \mathbb{R}^d のボレル集合全体, \lambda^d は d 次元ルベーグ測度)は \sigma-有限測度空間。A_{n} として [-n,n]^d を考えれば良いです。
さて、上の \sigma-有限測度空間の定義、実は関数を使って特徴付けることが出来ます:
測度空間 (X,\mathcal{F},\mu) が \sigma-有限測度空間であることと次は同値:
X 上の実数値関数 f で任意の x \in X に対して f(x)>0 かつ \int_{X}f\,d\mu<\infty を満たすものが存在する。
各点で真に正かつ可積分なものが存在する、\sigma-有限でないとこういう関数の存在すら保証されないんですね・・・。
気が向いたら証明を書こうと思います。では今日はこのへんで。
測度空間 (X,\mathcal{F},\mu) が \sigma-有限測度空間であるとは次の条件が成り立つときに言うのでした:
\mathcal{F}-可測集合の列 \{A_n\}_{n=1}^{\infty} であって X=\bigcup_{n=1}^{\infty}A_{n}、全ての n \in \mathbb{N} に対して \mu(A_n)<\infty を満たすものが存在する。
応用上重要な測度空間は大体 \sigma-有限測度空間です。例えば、(\mathbb{R}^d,\mathcal{B}(\mathbb{R}^d),\lambda^d) (ここで、\mathcal{B}(\mathbb{R}^d)は \mathbb{R}^d のボレル集合全体, \lambda^d は d 次元ルベーグ測度)は \sigma-有限測度空間。A_{n} として [-n,n]^d を考えれば良いです。
さて、上の \sigma-有限測度空間の定義、実は関数を使って特徴付けることが出来ます:
測度空間 (X,\mathcal{F},\mu) が \sigma-有限測度空間であることと次は同値:
X 上の実数値関数 f で任意の x \in X に対して f(x)>0 かつ \int_{X}f\,d\mu<\infty を満たすものが存在する。
各点で真に正かつ可積分なものが存在する、\sigma-有限でないとこういう関数の存在すら保証されないんですね・・・。
気が向いたら証明を書こうと思います。では今日はこのへんで。
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